ガラスの靴をもう一度


思った以上に楽しい時間が過ごせた後、店を出た時には、夜の空気は夏の近さを感じる生暖かいものに変わっていた。

「原田さんが羨ましいです。そんなに想われて…」

「何言ってるのよ。ただ、崇史の支えになれてるって実感はあるんだ。それが、私を強くさせてる。そんな気がする」

支えか…。

大きな会社を束ねる雅貴の支えに、私はなれなかった。

仕事でもプライベートでも、雅貴が必要としていたのは私じゃなかったんだわ。

「だけど、花ちゃんだって想われてるじゃない」

「え?私が?」

一瞬、心臓が飛び出すかと思ったくらい驚いてしまった。

雅貴の事を言ってるはずはないのに…。

「川上くんよ。彼ね、ニューヨーク勤務が前倒しで実現しそうなんだって」

「ええっ!?そうなんですか?」

< 346 / 494 >

この作品をシェア

pagetop