ガラスの靴をもう一度
思った以上に楽しい時間が過ごせた後、店を出た時には、夜の空気は夏の近さを感じる生暖かいものに変わっていた。
「原田さんが羨ましいです。そんなに想われて…」
「何言ってるのよ。ただ、崇史の支えになれてるって実感はあるんだ。それが、私を強くさせてる。そんな気がする」
支えか…。
大きな会社を束ねる雅貴の支えに、私はなれなかった。
仕事でもプライベートでも、雅貴が必要としていたのは私じゃなかったんだわ。
「だけど、花ちゃんだって想われてるじゃない」
「え?私が?」
一瞬、心臓が飛び出すかと思ったくらい驚いてしまった。
雅貴の事を言ってるはずはないのに…。
「川上くんよ。彼ね、ニューヨーク勤務が前倒しで実現しそうなんだって」
「ええっ!?そうなんですか?」