ガラスの靴をもう一度
凄い…!
来年の春を目指していたのに、前倒しで実現しそうだなんてさすが。
「じゃあ、秋くらいですか?」
「ううん。夏」
「夏!?もう、後少しじゃないですか!それも、真木さんから聞いたんですか?」
「まさか、そんな機密情報を教えてくれる訳ないでしょ?噂よウワサ」
噂で?
ちょっと、ちょっと。
どうして私には、そんな噂も入ってこないのよ。
「知りませんでした。そんな事」
ふて腐れた様に言うと、原田さんは含み笑いをしたのだった。
「すぐに聞けるんじゃない?それも本人から」
「本人から…?」
原田さんはそう言い残すと、タクシーに乗り込んで帰って行った。
一人、夜の街を歩きながら、ふと考えたのは川上くんの事。
本人から聞けるって、転勤になるっていう事を?
それは、深い意味で…?
どこへ向かうでもなく、まだ人の多い大通りを歩いていると、
「萌?」
後ろから雅貴が呼び止めてきた。