ガラスの靴をもう一度
振り向くと、スーツ姿の雅貴が一人で立っていた。
「雅貴…」
麻生さんは?
「やっぱり萌だった。こんな時間に、一人で何してるんだ?」
少し息を切らせている。
まさか、走ってきたとか…?
「原田さんと飲んでたの。今から帰ろうと思って…」
「そうか…」
嫌だな。
何だか、ぎこちない。
「雅貴は?」
「ああ、俺は営業回りが終わって、ちょっと飲んできた帰りだよ」
「一人で?」
「…そう。一人で」
また、嘘をついた。
そうやって、何でも嘘をつくのね。
ため息をついた私は、
「じゃあね。私、もう帰るから」
そう言ってタクシー乗り場へ向かおうとした。
すると、
「ちょっと待て」
雅貴に腕を掴まれたのだった。