ガラスの靴をもう一度
心配?
「そんな白々しいウソはやめてよ。私、一人で帰れるから、離してくれない?」
そう言ったのに、雅貴は強引に腕を引っ張ると、客待ちをしているタクシーに乗り込んだ。
「ちょっと、降りるってば!」
悪あがきする私は、酔っ払い女そのもの。
50代くらいの人の良さそうな運転手さんは、少し呆れ顔で見ている。
「いいから、おとなしくしろよ。運転手さん、すいません出てください」
そう言って雅貴が告げた行き先は、雅貴のマンションだった。
「卑怯じゃない!実家へ向かってよ」
抗議した私を、雅貴は自分の胸へ引き寄せた。
変わらない大人の甘い香り…。
雅貴の香りも温もりも、まだ私を安心させるものだった。
そしてその心地良さに、私はいつの間にか眠っていたのだった。