ガラスの靴をもう一度
隠し事は、やっぱり嫌だよ。
雅貴を疑いながら接していくのは、もっと嫌。
そして、雅貴を軽蔑していくのはもっと、もっと嫌。
だから、私は離れる決心をしたんだから。
「さよなら。雅貴…」
眠っている雅貴の唇に、最後のキスをした。
夢で見た唇の感触は、やっぱり雅貴だったんだ。
無意識に、キスをする夢を見てたんだね…。
それともあれは、現実?
なんて、そんな事はもういい。
私たちが、もう一緒になれないっていう事実は、変わらないんだから。
そっとベッドを降りて、身なりを整えると、丁寧にソファーの脇に置かれたバッグを手に取った。
と、その時、何かが足りない事に気付いたのだった。
「あれ!?靴の袋は?」