ガラスの靴をもう一度
川上くんは、人目につかない非常口へ私を連れて行くと、そこで優しく抱きしめた。
雅貴以外の人に、抱きしめられたのは初めて。
川上くんの胸も温かくて、そして私がすっぽりと入るくらい広かった。
だからなのか、意外なくらいに心地いい…。
「川上くん、ありがとう。優しいんだね」
「いや、違うよ。どんな理由でもいいから、萌ちゃんに俺を見て欲しいって、そう思ってるだけだから」
小さく笑って、私の髪を優しく撫でる。
どこまでも、気を遣ってくれるんだね…。
「ねえ、萌ちゃん。みんなに萌ちゃんとの関係は話していいかな?」
関係を話す…?
それって、雅貴にも知られるっていう事よね?
そうよ、それでいいじゃない。
何を戸惑う必要があるのよ。
雅貴もホッとするかもしれないじゃない。
私が新しい恋をしたら…。
「うん。いいよ。隠す必要はないものね」