ガラスの靴をもう一度
「そうなのか!?さすがだなあ、花井ちゃん。川上くんは、将来性抜群だから」
部長は豪快に笑いながら、照れ臭そうな顔を浮かべる川上くんの肩を叩いた。
雅貴に崇史さん、そして麻生さんの驚いた顔を見ると、原田さんはどこか違う人の噂で聞いたんだと思う。
「そうですよ原田さん。さすが、情報が速いですね」
「当たり前よ。こう見えても、顔は広いんだから。だけど、花ちゃん水臭いじゃん。真っ先に報告してくれてもいいのに」
口を尖らす原田さんに、申し訳なさそうな顔をして謝る。
「すいません…。まだ、恥ずかしくて」
なんて本当は違う。
崇史さんに、報告されたくなくて言えなかった。
できるだけ遅くあって欲しかったから。
雅貴に知られるのが。
それは、今さらだけど…。
「でも花ちゃん。もうすぐ川上くんは、ニューヨークだよ?遠距離だね」
原田さんは眉を下げて、気の毒そうに言った。