ガラスの靴をもう一度
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「今夜は風が涼しいね」
「そうだね。萌ちゃん、肌寒くない?」
「大丈夫だよ。だって、もうすぐ夏だよ?」
笑って答えると、川上くんは苦笑いをした。
「そうだよな。俺、柄にもなく緊張してる」
仕事帰り、街とは反対方向の海岸沿いの道を歩いている。
そんな私たちは、誰から見てもカップルに見えるんだろうな。
ごく普通のカップル。
思えば、雅貴とは会社帰りに会うなんて出来なかった。
だけどそれは、私が作ったものだったのよね。
雅貴の会社に入らなければ、そんな必要はなかったのに…。
「萌ちゃん、手を繋いでもいいかな?」
ゆっくりと歩きながら、川上くんが優しい眼差しでそう言ってきた。