ガラスの靴をもう一度
「萌ちゃん、少し海を見ようか?」
川上くんはそう言うと、少し先にある広場へ連れて行ってくれた。
芝居が広がるその場所は、先の方に堤防があり、海が近くで見られる様になっている。
所々にオレンジ色の街灯がある他は、周りには何もなく波の音だけが聞こえていた。
「近くまで行こう」
堤防の近くまで歩いていくと、より波の音が大きく感じる。
「潮の香りがするね」
「うん。夏が恋しくなるだろ?」
「確かに、恋しくなりそう」
笑いながら答えると、川上くんも微笑んで、そっと私の頬に触れた。
「萌ちゃん、俺は萌ちゃんの彼氏だと思っていいんだよね?」