ガラスの靴をもう一度
川上くんは電話を切ると、私に再び笑顔を向けた。
「ごめんな。ニューヨークへの打ち合わせが多くて」
「ううん。さすが川上くんね。あんなに饒舌な英語が話せるなんて、感心しちゃった」
「学生の頃に、短期留学をしてた事があるから。だけど、社長には敵わないよ。萌ちゃんは聞いた事がある?」
雅貴?
そういえば、まともに聞いた事はない気がする。
「ううん。そんなに凄いの?」
英語が出来るのは知ってるけれど…。
「凄いよ。だいたい、あんなに完璧なビジネス英語が出来る人なんて、なかなかいないと思うんだ」
「川上くんにとって、社長は本当に憧れなのね」
まるで子供の様に目を輝かせる川上くんに、思わず笑ってしまった。
「そりゃ、そうだよ。目標だから」
目標か…。
その言葉を、素直に聞けられたらいいのに。
雅貴の話が出るたびに、胸が高鳴る自分が嫌だ。