ガラスの靴をもう一度
「そろそろ帰ろうか萌ちゃん。明日も会えるから」
「うん…。でも…」
いいのかな?
このまま帰っちゃっても。
「どうしたの?萌ちゃん」
立ちすくむ私に、川上くんが声をかける。
「川上くん、もう一度…」
「もう一度?」
「キス…して?」
こんな手段で雅貴を忘れようとするのも、川上くんを好きになろうとするのも間違っている。
それは、分かってる。
分かっているけれど、どうにかしたかったから。
こんなフラフラする想いを、吹っ切ってしまいたかった。
「萌ちゃんは、本当に健気なんだな」
川上くんはそう言って、もう一度優しいキスをしてくれた。
そして私は、込み上げる涙を抑えて、その感触を覚えようとしたのだった。