ガラスの靴をもう一度


川上くんは小さく微笑むと、デスクへ戻って行った。

「いや~ん!ラブラブじゃん」

原田さんは腕を突いて冷やかす。

こんなやり取りすら新鮮で、恥ずかしさで顔が熱くなってきた。

「私、ちょっとお手洗いに行ってきます!」

原田さんの視線を感じつつも、いたたまれなくて、逃げる様にオフィスを出た。

廊下のひんやりとした空気が気持ちいい。

思い返せば、雅貴との秘密の交際に、こんなやり取りはなかった。

誰かに冷やかされたり、堂々と庇ってもらえたり…。

「仕方ないか。同級生じゃないんだし、共通する場所がなかったのよね」

とりあえず、気分を変えてこよう。

そう思って、お手洗いに向かった時だった。

「花井さん」

麻生さんに声をかけられた。

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