ガラスの靴をもう一度
「会社は大変な時だけど、少しくらいは、気分転換したいよな?」
仕事中の殺伐とした時間が嘘の様に、川上くんと来た店には笑い声が溢れている。
路地裏の小さな居酒屋で、店内は20人ほどの客で満席だった。
「うん。この間、連れて行ってくれたお店とは違うのね?」
店主の人と知り合いで、川上くんの社交的な性格が垣間見えたみたいで、嬉しかったんだけど。
「ああ。会話を聞かれるのが恥ずかしいから」
いつもと変わらない口調だけど、目をなかなか合わせてくれない。
川上くんはメニュー表を見ながら、適当に料理を頼んでいる。
話しかけ辛さを感じていた時、
「萌ちゃんの好きな人は、社長だったんだね」
川上くんから、話しを切り出してきたのだった。