ガラスの靴をもう一度


言葉を失う。

周りの騒ぎ声が遠くに感じるほど、私たちの時間だけが止まったみたい。

「萌ちゃんが、社長を好きだった事実がショックなんじゃない。もちろん、驚いたけど。でも、やっぱり今でも好きなんだね?」

「川上くん!」

「違うなんて、言わないでくれよ?」

私の言葉を遮る様に、川上くんはそう言った。

「心配なんだろ?会社がこんな風になって。社長の力になりたくて、あの場へいたんだよね?」

「それは…」

川上くんが疑ってる。

初めて見せる強い口調に、すっかり萎縮してしまった。

「もしかしてニューヨークも、社長がいた場所だから来てくれるの?俺と一緒だからじゃなくて」

「違う!そうじゃないよ。私なりに、覚悟を決めて…」

「そうかな?だって萌ちゃん、言ってたろ?どのみち、会社を辞めるつもりだったって。社長と顔を合わせるのが辛いからなんじゃないか?」

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