ガラスの靴をもう一度


……店を出た時には、雨が降り始めていた。

川上くんは、「今日は、一人で考えたい」と言って、一足先に店を出ていたのだった。

どれだけ驚いただろう。

そして、どれほど傷つけちゃった?

あんなに、一途に思ってくれていたのに…。

店を出る間際、川上くんが言ってたっけ。

「最初は、好きな人を忘れきれなくてもいいと思ってた。だけど今は、萌ちゃんの心を独り占めしたい」

って…。

「あ~あ…。私って、本当に最悪」

雨に打たれながら夜の街を歩いていると、涙がこぼれ落ちていく。

どうして、大事な人たちを傷つけてしまうんだろう。

すれ違う人の不審そうな視線を感じつつ、しばらく歩いていると、いつの間にか雅貴が靴を買ってくれた、ブランドの店に着いていた。

懐かしい…。

あれきり行っていないな。

尻込みして入れない私を、雅貴は引っ張って連れて行ってくれたっけ。

あの時は、本当に幸せだったのに…。

懐かしさを感じながら、その場を離れようとした時、

「萌さん?」

店から女性店員さんが出てきたのだった。

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