ガラスの靴をもう一度


「実家を売る…?」

「そう。萌に完璧フラれたら、あの家を売ろうという話で落ち着いたんだよ」

そう。

人に話すには気恥ずかしい事だが、俺は遠くない未来、萌と結婚をしようと思っていた。

いつも側にいてくれた萌に、結婚という形でケジメをつけたかった。

だから、新居の一つに、あの実家を譲り受ける予定だったのだ。

隣には、萌のオヤジさんが住んでいる。

父子家庭で一人っ子の萌にとって、オヤジさんの側を離れるのは、どんなにか心配だろう。

そう思って、隣に住むつもりだったけれど…。

肝心の萌にフラれたんじゃ、必要ない。

両親も便のいい中心地のマンションが気に入って、そこで落ち着くと言っていたし…。

「なあ、雅貴」

崇史がいきなり、“プライベートモード”で話しかけてきた。

< 456 / 494 >

この作品をシェア

pagetop