ガラスの靴をもう一度
「実家を売る…?」
「そう。萌に完璧フラれたら、あの家を売ろうという話で落ち着いたんだよ」
そう。
人に話すには気恥ずかしい事だが、俺は遠くない未来、萌と結婚をしようと思っていた。
いつも側にいてくれた萌に、結婚という形でケジメをつけたかった。
だから、新居の一つに、あの実家を譲り受ける予定だったのだ。
隣には、萌のオヤジさんが住んでいる。
父子家庭で一人っ子の萌にとって、オヤジさんの側を離れるのは、どんなにか心配だろう。
そう思って、隣に住むつもりだったけれど…。
肝心の萌にフラれたんじゃ、必要ない。
両親も便のいい中心地のマンションが気に入って、そこで落ち着くと言っていたし…。
「なあ、雅貴」
崇史がいきなり、“プライベートモード”で話しかけてきた。