ガラスの靴をもう一度
こいつは、仕事の時には俺に敬語を使う。
あくまでも、“社長と秘書”という関係を崩さない為に。
だけど、プライベートとなれば、俺たちは完全に対等だ。
「何だよ、急に」
顔を上げると、いつもと違う崇史の後ろめたそうな姿があった。
「俺さ、多分、川上に萌ちゃんとお前の仲が知られる様な事を、したかもしれないんだ」
「どういう事だよ」
「ほら、今回の事故が明るみになった頃、萌ちゃんがお前に会いに、社長室に来た事があったろ?」
ああ、あれか。
今でも後悔してる事の一つ。
萌の腕を振り払った事。
あの時は、本当に忙しかったし、何より萌には心配なんてかけたくなかったから、それでつい、してしまった事だけど…。
心底、後悔している。
「あのやり取りを、川上は見てたんだ。二人にフォローするつもりで、二人は幼なじみって言ったんだけど…」