ガラスの靴をもう一度


こいつは、仕事の時には俺に敬語を使う。

あくまでも、“社長と秘書”という関係を崩さない為に。

だけど、プライベートとなれば、俺たちは完全に対等だ。

「何だよ、急に」

顔を上げると、いつもと違う崇史の後ろめたそうな姿があった。

「俺さ、多分、川上に萌ちゃんとお前の仲が知られる様な事を、したかもしれないんだ」

「どういう事だよ」

「ほら、今回の事故が明るみになった頃、萌ちゃんがお前に会いに、社長室に来た事があったろ?」

ああ、あれか。

今でも後悔してる事の一つ。

萌の腕を振り払った事。

あの時は、本当に忙しかったし、何より萌には心配なんてかけたくなかったから、それでつい、してしまった事だけど…。

心底、後悔している。

「あのやり取りを、川上は見てたんだ。二人にフォローするつもりで、二人は幼なじみって言ったんだけど…」

< 457 / 494 >

この作品をシェア

pagetop