ガラスの靴をもう一度
「何でって、雅貴が航空券を送ってきたんじゃない!」
口を尖らせる萌を見て、俺は我に返った。
「ごめん。いや、そうじゃなくて、もう諦めてたから」
本当に萌がいる。
その事が、年甲斐もなく俺の胸を高鳴らせた。
「それが、入国審査でつかまったの!英語が分からないから、意味も分からないし…。でも、結局勘違いだったみたいで、腹が立つでしょ?」
目の前にいる萌は、よそよそしかった萌じゃない。
俺の側にいてくれた萌そのものだった。
「ちょっと、聞いてる?雅貴、何だか変よ?」
そりゃ、変にもなるって。
「もう完全に、萌にフラれたと思ったから」
ようやく笑顔を見せられた俺に、萌も優しい笑顔で返してくれた。
「ごめんね。遅くなって。私、雅貴のとこへ来たよ」