私が少女だった頃
「雨、止まないなぁ」
木下の言葉に私は肩を竦める。
「教室に戻らないと、また先生に怒られちゃうよ」
「佐藤はそればっかりだなぁ」
間延びした声でそう言って、木下は歯を見せて笑う。

年相応な仕草、表情、言葉。
妙にませているクラスメートたちと違って、木下は純粋だ。
一緒にいて疲れないのは、彼がどこまでも自然体だからだろう。

「私のどこがいいの」
私が呟くと、木下は再び木に登りながら「顔!」と言った。
え、顔!?
慌てて木の上の彼を見上げると、木下は笑った。

「あと声と、性格と、頭がいいところ。
それに話してて面白いところ。
一緒が楽しいところ……あとなんか色々!」

指を折りながらそう言って、木下はまた歯を見せて笑った。
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