私が少女だった頃
「先生ね、あなたにストラップをもらった時すごく嬉しかったのよ。
ほら、今もここにとってある」

私が去年先生にあげたお茶犬のストラップを、先生はスピーカーやステレオが収納された透明な戸棚から取り出す。
気に入った生徒からもらったものはすべてそこの丁寧に飾られていて、特に私があげたストラップはすべて最前列に並べられていた。

全種類を集めたくてお茶を買い占めて、その際にかぶったものを先生に渡したのだ。
先生がお茶犬を好きだと言ったから、共通点があることが嬉しくて、つい。

「先生、佐藤さんのこと大好きよ。
だけど、あなたは最近音楽の授業までサボっているわね。
どうしてそんなに不真面目な子になっちゃったの?」

先生の言葉に私は顔を伏せた。
違うんです……。
なんてそんな言葉が口から零れた。
何も違わないのに、私はいったい何を否定したかったのだろう。
熱気と木の匂いに包まれて、頭がボーッとした。

--私が世界を嫌いなんじゃなくて、世界が私を嫌いなんです。

そこらに散らばる悪意と、常に背後へ立つ好奇。

そして私を縛り付けるのはありとあらゆる人からの望まない愛情・支配欲。

「合唱コンクールで、先生は佐藤さんにピアノを弾いてほしいの。
ねぇ、よかったら今日から練習していかない?
毎日ここに寄ってちょうだい。
先生、佐藤さんの顔を毎日でも見ていたいのよ。
だってあなたはキムちゃんにとても似ているから」
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