Kiss Kiss Kiss
そんなある日のことだった。
朝陽さんの声がして 足を止めた。

「ごめん。」

しばらく朝陽さんの声はしなかった。

「どう言ったらいい?私は正直に話したつもりだよ。
これ以上はもう 言葉を飾れないし
見当たらないよ。」

いつもの朝陽さんと違う声に
これは重要な会話だとピンと来て
息を潜める。


「きみのことは好きだよ。
だけどそれは 好きであってそれ以上の気持ちはない。」

「きみも最初に私の考えに同調してくれた……
身勝手かもしれないけれど 束縛はやめてほしい。」


胸がズキンと鳴った。


束縛はやめてほしい

冷たい声だった。


私も今ならその言葉がどんなに
残酷なのか身にしみてわかる気がする。


「悪いけれど
もう 会わない・・・・・・。」


そう言うと朝陽さんは携帯を置いて
深くため息をついた。


「最低な人間だよな・・・・・。
どうして男と女の関係は最後はきれいに
終われないんだろう……。
あの人のように………。」

そう言いかけてまたため息をついた。


「司に軽蔑されるのも
無理ないな・・・・・・・。」

めずらしく タバコに火をつけた。

朝陽さんがタバコを吸うのを初めて見た日だった。
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