Kiss Kiss Kiss

「おまえの作ったものなんか
誰が食うか！！！」

怒りの矛先はすぐに愛人である母に向く。


わかってる……
無神経にここへ連れて来られて
さすがに母も動揺していた。


自分より五歳年下の朝陽さんは
ちょうど難しい時期でもあった。


閉じられた仏間の前で
いつも泣いている朝陽さん
花も水も飾り拝むことも許されず・・・・
仏間のドアは固く閉ざされていた。


冷酷な男だった。
なつかない朝陽さんを気に入らなければ殴り
蹴り飛ばす。

それを朝陽さんはジッと耐えていた。

その怒りに満ちた目が
自分と同じだったと母が言った。


冷酷な父親だったけれど
母にだけは　弱かったらしい。


「星子さんに睨まれると怖かったな……
さすがにあの悪さえも
星子さんには弱かった。
あいつは　強い女が好きだったんだろうな。
母親みたいに殴られても泣いて我慢する女に
飽き飽きしてたんだと思う。」


母はある日　仏間のドアを蹴り破った。
そして仏壇を開け放し　美しい花を供え
炊き立てのご飯とお水を供え始めた。


「おまえには拝んでもらいたくない」

朝陽さんは母の背中を思いっきり
蹴り飛ばした。