Kiss Kiss Kiss
「海だ~~~!!!」

車を停めて 私は一目散に走り出していた。
昔昔 一度だけ 母と来た海

波打ち際を 興奮して走り回った。


波が打ち付ける音が ザブン ザブンと鳴る。


「あ~~~海~~~~!!!」

田舎で山ばかり見ていた私には 海は憧れだった。


朝陽さんをすっかり忘れて
スカートを膝上までまくり上げて波と戯れる。


「冷たい~~~!!!」

もうすぐ六月になろうとしているのに
あと一か月もしたらここは

家族連れや友人同士 カップルが
たくさん訪れるんだろう。


海が真っ赤に染まり始めた。


「あ・・・・・・」

夕焼けが海に反射して キラキラ光り出した。


私は言葉を忘れてその美しさに茫然となる。
涙が自然に流れ落ちた。


夕日という名前は きっと母がこんな真っ赤な空を見て
思い浮かんだんだろうか・・・・・。

海に反射する夕焼けを見ながら
自分の名前がとても誇らしく感じた。


「夕日ちゃん・・・・」

朝陽さんの声に我に返る。

「あ ごめんなさい。なんだか興奮してたら
この夕焼けにすっかり見とれちゃって……。」

朝陽さんの存在をすっかり忘れて
はしゃいでいた自分が恥ずかしくなった。

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