金曜日の彼女【完】
「…瀬良が言ってたこと」

瀬良は純菜の苗字。

「別に！なんでもないよ」

「――…そう？」

納得はしていない様子だったけれど、それ以上は聞いてこなかった。



それからしばらくはまたみんなの歌を聞いたりして過ごしていたけれど

「私、そろそろ帰るね」

特に歌うわけでもないから、ここにいる意味がない気がした。

「あ、琴葉。送るからもうちょっと待って」

そう言って航平は私の腕を掴んだ。

「あー…うん、わかった」

言葉の優しさとは裏腹に強く握られた腕に戸惑いながらももう一度座った。



しばらくして、クラス会はお開きとなったが、何人かのグループはそのあともどこかへ行くようだった。


会計を済ませた航平が出てきて

「お待たせ、帰ろう」

私の手を取って歩き出した。

「え？ちょっ…航平？」

後ろでは何人かがそれに気がつき、冷やかしている声が聞こえる

「おーい、航平またな～」

そんな中で呑気に手を振っている森本 輝。

航平は少し振り向いて手を軽く上げた。


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