金曜日の彼女【完】
だけど――…

自然と龍太に似ている人を目で追ってしまう。

携帯の表示を何回も確認する。

どこかで――…龍太を待っている私がいることも確かだった。


航平も口にこそ出さないけれど、きっとそれをわかっているんだと思う。

それでも、今の私には航平が必要だと思った。

誰よりも私を大事にしてくれて、私にだけ、愛を注いでくれる――…

私が願った恋。


―――――――

――――

「待った?」

「ううん、全然!!今来たとこだし」

「よかった!じゃあ行こうか」

「うん!」

航平が手を差し出す。その手をそっと握ると、さらに力を込めて握り返してくれる。

そのまま映画館を目指して歩いた。



「そういえば、航平ってどこの大学目指してるの?」

「俺?東大」

東大!?それって…

「あの日本一入るのが難しい東大?うそ!!すごい!!」

「うん、実はうそ」

「は!?」

プッと笑う航平。

う、うそ!?

「琴葉、すぐ騙されるんだから…おもしろ!」

「―――…ちょっと!なによー」

プイッと横を向いて口を尖らせた。

「琴葉ちゃーん、ごめんね?こっち向いて?」

ふーんだ。向いてなんかやらないもん!!


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