金曜日の彼女【完】
「こーとーは?」

握っていた手をグイッと引っ張られて、肩を抱かれた。


―――…唇に暖かい感触。

「―――え?」

それがキスだとわかるまでに、しばらく時間がかかった。

「…こ…へい?」

「へへ、キス…しちゃった」

そう言って嬉しそうに舌をペロリと出す航平。



なのに―――…


私は

あのときの

龍太からの

たった一度きりの

キスを

思い出していた。




忘れなきゃ

航平のために

龍太のことはもう

忘れなきゃ。



「――…も、もう!!航平、びっくり!!」

照れているふりをして、俯いたまま、航平の胸をドンドンと叩いた。

「ハハ、ごめんな!でも琴葉があんまりにも可愛かったからつい、ね」

そう言って私の頭を優しく撫でる。

私は航平の胸に顔を埋めてしがみついた。

「…航平…好き」

「―――…うん、俺も…好きだよ」



―――…私は……嘘つきだ……


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