金曜日の彼女【完】
そんなすごい人がどうして私にこの名刺を渡したんだろうか…。

どうみても、誰が見ても私よりよっぽど龍太とお似合いだし…。


だけど――彼女は確かにあのとき、言ってた。

“あなたなら…”


でも―――

今の私になにができるっていうの?

―――…純菜が名刺をジッと見ている。

「――…琴葉は…どうしたい?…龍太を…捜す?」

今さら――…そう言いたげに名刺に視線を落とす。



わかってる。

私には航平がいるし…

わかってるの――…。

「――…純菜なら、どうする?」

聞いてどうするんだろう…。

だけど、私はいつも誰かに頼ってしまう――。

「私は――…」

言いかけた口を再び閉じ、目を伏せた。

「純菜は…今、幸せ?」

すごくバカな質問しているって思う。それでも――…


「幸せ…かな」

切なそうに微笑む。


「琴葉は?」

「――…幸せ」

純菜の目を見ることができない――…。


< 130 / 359 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop