金曜日の彼女【完】
純菜はそんな私から視線を外さないまま。

ジュースに差してあるストローを曲げたり伸ばしたりしている。

その様子を目の端に捉えてチラリと見る。

「――…宮内はさ、琴葉にベタ惚れなのよ」

「……」

確かに航平は、前に付き合ってたとき以上に優しい。

私をすごく大切にしてくれる。

メールや電話も欠かさず。

なにをおいても私の気持ちを優先してくれる。

非の打ち所がない、申し分ない彼氏。



「――…もういいんじゃない?龍太のことは」

「……」

なぜか―――頷けない私がいる。

なぜか?――…ふっ、そんなこと、わかってるくせに。


純菜に聞く前から、ううん、きっと会う前、名刺を受け取った時点で、私の答えは決まっていた。


それでも――…

航平の哀しむ顔が浮かぶ。

“琴葉”優しく囁く声が聞こえる。



私は――…ずるい。

航平を利用してるんだ。

龍太を忘れるために――…


そんなこと最初からわかっていたことなのに―――。


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