金曜日の彼女【完】

電話の向こう側

「もし、龍太に会えたとしても、もう私に知らせる必要はないから」

最後にそう言い残して純菜は帰っていった。

純菜には大切な彼がいる。

今の幸せを壊すつもりはないんだよね。



だったら私は―――…?


握りしめていた名刺を見て、携帯を手に取る。


「……」


番号を押す手は震えていた。


トュルルル―…トュルルル―…

心臓が飛び出しそうな勢いで跳ねる。


数回のコールのあと

『はい、JINプロダクションです』

若い女性の滑らかな声が聞こえてきて、一気に緊張が頂点に達する。

「あ、あ、あの、あの」

思いっきり、噛みまくりのどもりまくりの私。

『……どちら様でしょうか?』

怪訝そうな声が聞こえてきて慌てた。

一旦、大きく息を吸い込んだあと

「はい!戸田 琴葉といいます。作、作本 仁…さんはいらっしゃいますか?」
一気に捲し立てた。

『作本…ですか?――…少々お待ち下さい』

♪♪♪~

耳元に軽快な保留音が響く。

―――…

『はい、お待たせしました。作本ですが…』

断られるのを覚悟してたけど、案外簡単に繋がった。

電話の声からすると20代後半から30代前半、といったところかな…。

「は、初めまして。戸田といいます」

『はあ…戸田さん。どのようなご用件でしょうか?』

「…龍太を――…」

『――…はい?』

「竹内 龍太を―――知っていますか?」




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