金曜日の彼女【完】
あれこれ考えてたけど、結局は直球で訊くしかなかった。

『―――…竹内………龍太…?』

相手の、少し戸惑ったような声。

「はい」

『えっと、戸田さん…だったかな?』

「あ、はい」

『…申し訳ないけど…竹内 龍太っていう名前には…覚えがないんだけど…』

「え?いや、でも…そちらに電話をすればわかるって…そう聞いたんです!」

『あー……』

さらに戸惑っているのか、それとも言葉を探しているのか、少しの沈黙。

それでも―――掴みかけた龍太の消息。


このまま、引き下がるわけにはいかない。

「会いたいんです…龍太に――…」



そう――…私はただ龍太に会いたいだけ…

ただそれだけ。

どんな理由でいなくなったか、なんて私にはわからない。

私を嫌いになったからかもしれない――…

それでも――

やっぱり、私は…会いたい――…。




『…申し訳ないけど、うちではわからないから』

そう言って相手は一方的に電話を切ってしまった。

「あっ!―――」

ツーツー…と虚しい音が聞こえてきた。



龍太の消息を知る唯一の鍵。


それをなくしてしまったかのような気分だった。



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