金曜日の彼女【完】
そのとき―――…

聞こえてきた声は


その声は――――…


『…琴葉…』

「っ!!」

今にも消えてしまうんじゃないかというような小さな声。


だけど―――

その懐かしい声は――…




『…元気だったか?』

「……」

『……琴葉?』

「……っうん」



言葉にならない―――

言いたいことはたくさんあった――

聞きたいこともいっぱいあった――


だけど、今――…この瞬間。

私は確かに幸せを感じていた―――。


そのときの私には、航平のことも、純菜のことも、麗美のことも、なに一つ頭になかった―――


あるのは―――感じているのは…


電話の向こう側の



―――…龍太の声だけだった。


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