金曜日の彼女【完】
「龍太がお世話になってたみたいで…」

サングラスを外した作本さんは、思った通りいい男で、龍太と同じように低く澄んだ声をしている。

「い、いえ…私はなにも」

いまいち、なにが起こっているのか、把握できてない私。


龍太が突然現れただけでもびっくりなのに

名刺の人まで現れるなんて…。



「…龍太、そろそろ帰らないと」

「えっ!?帰…るの?」

横にいる龍太に視線を向ければ、唇を噛みしめ苦しそうに俯いている。

「か、帰るって――…どこに?」

だけど、その問いに龍太は唇を噛みしめたままで、何も応えてはくれない。
隣で作本さんは苦笑い。

「…琴葉ちゃん…だっけ?」

「…はい」

「ごめんね?今日は連れて帰らないとまずい。黙って連れ出してきたからね」

「は?どういうことですか?」

黙って連れ出してって…意味がわからない。

「詳しいことはまだ言えないんだけどね…」

一体、なにがどうなってるの?

龍太になにが起こってるの?

作本さんとの関係は?

なにもわからないまま、また龍太と離れなくちゃいけないの?


「…近いうちに…必ず会いにくるから」

そう言って私の頬にキスをした――…。

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