金曜日の彼女【完】
そして、いきなり連絡を入れたと思ったら

≪話がある≫

たったそれだけ―――でも、わかってるんだよね、航平は。


俯いていて、その表情は読めないけれど、どんな話をされるのか…航平はとっくに気づいてる。


「航平…ごめん」

なのに、私はそれだけしか言えない…。

ホントに…私、最低だ。


もっとちゃんと言わないといけないはずなのに…。


航平がフッと寂しそうに笑う。

「まあ…いい話じゃないことはわかってたよ」

そして目の前のコーヒーを苦そうに顔をしかめて飲む。


甘党の航平。いつも砂糖やミルクを目一杯入れる。

だけど、今日はブラックで飲んでいる。

それがなんだか、哀しげに見えて…鼻の奥がツン、としてくる。



だけど、泣かない。航平の前では泣くことはできない。


私が全部悪いんだから。

私が航平を利用した。

龍太を忘れたいために。

航平の気持ちに、甘えてしまった。

私の弱さが―――航平を傷つけた。


唇をグッと噛みしめる。


「ごめんね…―――ありがとう」

そう言って席を立った。
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