金曜日の彼女【完】
「麗美はね、俺の遠縁の子でね。血の繋がりはないんだけど…
麗美のことをモデル事務所に紹介したのも俺なんだよね」

「はあ…」

それで彼女はこの人の名刺を持っていたのか。納得。



「あの…」

「ん?」

「龍太のお父さんっていうのは…ホントですか?」

正直、まだ半信半疑だった。

そんな私を作本さんはジッと見据えてから


「―――琴葉ちゃんは…龍太の…家族の話、聞いたことある?」

そう聞いてきた。


「家族…ですか?――いえ、一度も…。前に住んでたマンションも一人で暮らしてたみたいですし…」

第一、そこまで踏み込むことを、あの頃の龍太は許してはくれなかった。

「そっか…」

作本さんはまた新しい煙草に火を点け、だけど、ただそれをくわえているだけ。

なにかを考えているようなそんな横顔。



しばらくの沈黙のあと

「…琴葉ちゃんは…龍太を見て…誰かに似てるなって――思ったことはない?」

「え?誰かに――…ですか?」

「うん」

「……」

そういえば―――…確かに…前に一度、そう思ったことがあったことを思い出した。

小さく頷く。


すると作本さんが立ち上がって窓の方に進み、外の景色を眺めていたと思ったら、不意に私の方を振り返り

「龍太の…母親の話を…しようか…」

そう言って静かに語り始めた―――…。

< 151 / 359 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop