金曜日の彼女【完】
「あの女が寂しいだと?…っは…バカバカしい」

有り得ない、と首を横に振る。

「――…龍太、聖香がお前を妊娠しているとわかったとき…彼女はまだ16になったばかりだったよ」

16―――…今の私と同じぐらいだ…。

「……そんなことは知ってる。わかりきったことを聞きに来たんじゃない――」

「フッ…そうだな…」

作本さんは天を仰ぐように上を向いて、そして目を閉じ、ゆっくりとまた目を開いた。

「――…当時、聖香はいろんな男と付き合っていると思っていた。俺はその中の1人だと―――実際は…体の関係もあったのは…俺だけだったんだ。
妊娠を知ったとき、同時にそれを知らされた」


ハァ…と息を吐き出す。


「なんだよ、それ。付き合ってたのは…アンタだけだった、とでも言うのか?」

龍太の手がさっきよりもはっきりわかる程に震えている。

「……そう…なるな」

「は?なんだ?それ。アイツは…あの女はたまたまアンタが父親になっただけだって…俺にははっきりと…そう言ったんだ!!」

ダンッとテーブルを激しく叩きつける。

「…――龍太」

抱きしめられた手から伝わるのは――…どうしようもない怒り、哀しさ。


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