金曜日の彼女【完】
だけど…

仁が残した言葉――…。


「女優になった聖香を撮るのが俺の夢」

「聖香も――…叶えて」


どうして―――

あの言葉がずっと私を支配する。


龍太は可愛い。

誰よりも愛しい。

離したくない。


なのに―――――…


―――…



「聖香――…」

「なに?ママ」

ママからの突然の言葉――…。


「―――…っ…いやっ!そんなのいやよ!」

「聖香、あなたに…今のあなたに龍太はまかせられない」

「大丈夫よ!私は1人でも龍太を育てる!お願いママ。取り上げないで…」

悲痛な叫びは…届かない――…。


“龍太は私が育てるわ。戸籍上の父親は竹内がなることになったから――…”



――…

龍太を…取り上げないで…。

「…聖香。あなたはあなたの夢を…叶えなさい」

「は?なに言ってるの?」

そんなものとっくの昔に―――。


「仁君からカメラを取り上げてしまったらダメなように…
あなたからモデルという仕事…夢を取ってしまったら――…あなたがあなたじゃなくなる」
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