金曜日の彼女【完】
「あの街さ、俺が一番長くいたとこだし…友達もいるし……」

チラリと私を横目で見る。


期待しながら次の言葉を待つ。


「まあ……それにせっかく入った学校だったから」

―――ガックリ。

はあ…それだけ?

軽く落ち込む。

そんな私の思いを知ってか知らずか

そのまま話を続ける龍太。


「…けど、結局は有無も言わせず…ってかほぼ無理やり」

そう呟いて顔を歪ませた。


「で、でも…お…母さんは龍太のことも考えて…だから…」

もしも―――…SEIKAの子供だと知れたら

龍太のところにもマスコミが押し寄せないとは限らない。

それを避けるためには―――


「…別に…俺は構わないんだけどな」

「バレても?」

「もう…隠すの面倒臭い…」

顔を歪ませながら髪の毛をクシャッと掴む。


「――…作本さんも…そんなこと言ってた。バレても構わない…みたいなこと」

龍太がフッと笑って

「あのおっさんもここの生活に飽きてんだろ」

ぐるりと部屋を見渡した。


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