金曜日の彼女【完】
「ちょっ…お、お母さん!?」

「ん?なに?」

母はせわしなく動きながらキッチンからチラッとだけ顔を出す。



「…龍太って…誰だ?」

私の隣で朝食を食べていた和兄の低い声が聞こえてきた。


和兄とは9歳離れているせいか、思いっきり私を甘やかして、溺愛されて育った。

まあ、別の言葉で言うなら――…ただのシスコンだけど。

「へ?誰って…」

「琴葉の彼氏に決まってるじゃない」

キッチンから母が大きな声で答えている。


いや、だから、なんであなたはそれを知ってるんでしょうか?

「彼氏ー?お前いつの間に~」

瑛二兄はニヤニヤしながら読んでいた新聞をたたんで私の頭をバシッと叩く。

「―――…さん」

「は?」

「彼氏なんて――…お父さんは絶ーー対許さーーん!!」


「……ハァ」


…お父さんじゃなくて、兄貴でしょ、アンタは。


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