金曜日の彼女【完】
ボールと泡立て器を握ったまま呆然と立ち尽くす。

「なんでケーキ?」

「クリスマスだからに決まってるじゃないの!」

ニコニコと嬉しそうに作業を再開している。

変なの…。ここ数年は市販のものですませてたケーキを

なんで今年は手作りなんだろうか。



どうもさっきから母が変だ。

龍太のことを知っていたり、なにかを隠していたり…。


――…シャカシャカ…

材料を混ぜながらもそのことがずっと頭の端にあってか、なかなかうまくできずに母から何度も注意された。


「琴葉ー、お前の携帯鳴ってたぞー」

瑛二兄が階段から叫んでいる。

「わかったー」

多分…龍太だ。


「……さっきの龍太って男からじゃないだろうな」

和兄の不機嫌極まりない声を軽く受け流し、混ぜていた材料を母に渡して部屋に向かった。


部屋に入り、携帯を開くと、やっぱり龍太からのメールだった。


≪今日の夜6時頃に行く≫


「……」

これだけ!?


まあ…いっか

久しぶりに会えるみたいだし。

全部片づくまでは会えないって言ってたけど。

今日はなんといってもクリスマス・イブ。

恋人たちにとっても特別な日だもんね。


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