金曜日の彼女【完】
「――…すみません、じゃあ俺は出かけるんで」

リビングのドア付近で瑛二兄が挨拶をして、私達の前を通り過ぎようとして

ふと、龍太の前で立ち止まった。


「まさか、琴葉の彼氏がお前とはね。名前聞いても最初はわからなかったよ。――…久しぶりだな~」

目を細めて懐かしそうに龍太を見る瑛二兄。

「ハハ、ご無沙汰です、瑛二君」

―――――は?

どういうこと?

「――…なんで?なんで瑛二兄も龍太のこと知ってるの?」

「は?」



暫しの沈黙のあと―――…

「ブッ!!……お前…気づいてないわけ?龍太のこと」

笑いながら龍太の方を見る。

「は?なにを?」

「まあ、母さん連れてきたら少しは思い出すかな、なんて思ってたんすけどね」

そう言って少し困ったかのような表情をする。

「お、お母さん!?」

「クックックッ、まあ頑張れや」

ポンと龍太の肩を叩いてから瑛二兄は出かけていった。

「お母さんって!?」


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