金曜日の彼女【完】
玄関のすぐ横にある和室に入り、こたつのスイッチを入れる。
暖房は隣のリビングから入り込んできているので、部屋全体は暖かい。
「どうぞ、座ってください」
「ありがとう」
話…ってなんだろうか。
緊張しながら彼女の言葉を待った。
「―――…本当に懐かしいわ…いつの間にかこんな綺麗なお嬢さんになってるし…」
龍太のお母さんは懐かしむ目を細めながら私の頭を撫でる。
私自身にこの人の記憶はほとんどない、といってもいい。
ただ、あの柔らかい雰囲気、この手の優しさはどことなく、覚えている。
―――…この人はどんな想いから龍太を育てることにしたんだろうか。
それしか、本当にそれしか方法はなかったんだろうか――…。
もしも、龍太が実の両親の元で育っていたなら、今の龍太はいなかったのか。
あんな風に悩み、哀しみ、苦しみ、憎むこともなかったんじゃないか…。
「どうして…龍太を私が引き取ったんだろうって…思ってるわよね…」
今、まさに思っていたことを言われて、思わず目を見開く。
そんな私に寂しそうな微笑みを向けると
「…酷い母親よね…。聖香からは子供を奪い、龍太からは両親を奪った…」
そう言って目を伏せる。
暖房は隣のリビングから入り込んできているので、部屋全体は暖かい。
「どうぞ、座ってください」
「ありがとう」
話…ってなんだろうか。
緊張しながら彼女の言葉を待った。
「―――…本当に懐かしいわ…いつの間にかこんな綺麗なお嬢さんになってるし…」
龍太のお母さんは懐かしむ目を細めながら私の頭を撫でる。
私自身にこの人の記憶はほとんどない、といってもいい。
ただ、あの柔らかい雰囲気、この手の優しさはどことなく、覚えている。
―――…この人はどんな想いから龍太を育てることにしたんだろうか。
それしか、本当にそれしか方法はなかったんだろうか――…。
もしも、龍太が実の両親の元で育っていたなら、今の龍太はいなかったのか。
あんな風に悩み、哀しみ、苦しみ、憎むこともなかったんじゃないか…。
「どうして…龍太を私が引き取ったんだろうって…思ってるわよね…」
今、まさに思っていたことを言われて、思わず目を見開く。
そんな私に寂しそうな微笑みを向けると
「…酷い母親よね…。聖香からは子供を奪い、龍太からは両親を奪った…」
そう言って目を伏せる。