金曜日の彼女【完】
本当に思い出すときは来るのかな。

このまま、思い出せなかったら?


いったい、私は龍太とどんな約束をしたんだろう。

全部を思い出したわけじゃなかった…。

まだ、私達のあいだにある大事ななにか。



―――…コンコン

「――…はい?」

龍太と顔を見合わせてからそっと離れる。

「琴葉ちゃん、入ってもいいかな」

声の主は作本さんだった。

「あ、どうぞ」

カチャとドアを開けて、作本さんが顔を覗かせる。

「――…ああ、やっぱりここにいたのか、龍太」

「……」

なぜか、急に無表情になる龍太。



「龍太…?」


「2人とも…下に降りてきてもらってもいいかな」

「え?」

龍太を見るとその表情を崩さないまま。

「わかった」

それだけ言うと先に部屋を出ていく。

そんな龍太のあとを急いで追いかけた。



リビングに戻ると

和兄はかなり飲んだらしく完全に酔いつぶれ、ソファーに寝てしまっていた。

母はキッチンで後片付けの真っ最中。

龍太のお母さんがさっきと同じようにこたつに座っていた。


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