金曜日の彼女【完】
「なにか温まる飲み物持ってくるから」
部屋を出てリビングに入ると、和兄がソファーで布団をかけられて眠っていた。
一度寝るとなかなか目を覚まさない和兄。
それでも起こさないようになるべく音を立てずにキッチンへ向かった。
ホットミルクを作り、階段を上がろうとしたとき。
母が寝室から出てきた。
「…お母さん」
母は穏やかな表情で微笑むと
「龍太君…どうしてもあそこから離れなくてね。とりあえず毛布だけはかけたんだけど…」
そう言ってマグカップを持つ私の手に自分の手を包む。
「…だ、大丈夫…。今、部屋を暖めたから…ごめんなさい…心配かけて…」
「琴葉……ゆっくりね。ゆっくりと考えてからでいいから。できるだけ…理解してあげて」
「……」
「さ、温かいうちに持っていってあげなさい」
そっと手を離す。
「…うん。おやすみ…お母さん」
「―――…おやすみなさい、琴葉」
――――…
ミルクを溢さないように、階段の音をなるべく立てないように、ゆっくりと上がる。
「……」
理解――…
頭ではもうわかってる。
龍太のために、将来のために。
作本さんが最善の方法を考えてくれた。
龍太もそれを受け入れた。
部屋を出てリビングに入ると、和兄がソファーで布団をかけられて眠っていた。
一度寝るとなかなか目を覚まさない和兄。
それでも起こさないようになるべく音を立てずにキッチンへ向かった。
ホットミルクを作り、階段を上がろうとしたとき。
母が寝室から出てきた。
「…お母さん」
母は穏やかな表情で微笑むと
「龍太君…どうしてもあそこから離れなくてね。とりあえず毛布だけはかけたんだけど…」
そう言ってマグカップを持つ私の手に自分の手を包む。
「…だ、大丈夫…。今、部屋を暖めたから…ごめんなさい…心配かけて…」
「琴葉……ゆっくりね。ゆっくりと考えてからでいいから。できるだけ…理解してあげて」
「……」
「さ、温かいうちに持っていってあげなさい」
そっと手を離す。
「…うん。おやすみ…お母さん」
「―――…おやすみなさい、琴葉」
――――…
ミルクを溢さないように、階段の音をなるべく立てないように、ゆっくりと上がる。
「……」
理解――…
頭ではもうわかってる。
龍太のために、将来のために。
作本さんが最善の方法を考えてくれた。
龍太もそれを受け入れた。