金曜日の彼女【完】
龍太からの連絡が途絶えて数週間―――…。


「…純菜」

「――…なに?」

いつになく真剣な表情の貴明に戸惑う。


「3週間ぐらい前の水曜日…お前…なにしてた?」


ドクンッ―――――…

水曜日

3週間前

私は龍太と会っていた。


――…落ち着いて。落ち着くのよ。

心の中で何度も呟く。


「…――その日だったら…家庭教師が来てたけど」

声がうわずっているのがわかる。

彼の目が見れない。

「…そう…だよな」

結局、貴明はそれ以上なにも聞いてはこなかった。



だけど、その日から時々、なにかを考えているような仕草。

キスやセックスも、避けているのか、あまりしない。


疑ってる?


頭を霞める不安。


龍太のことが気になっていても、それでも私は貴明と別れるつもりなどない。


別れるなんて考えられない。


そんな不安定な状態のまま迎えた夏休み―――…。



中学のクラス会に出席したとき、再会した戸田 琴葉。

その琴葉から聞かされた。

龍太が高校を退学したこと。


琴葉が龍太の金曜日の彼女だったこと。



こんなときに


龍太との思い出を

引き出されるなんて――…。

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