金曜日の彼女【完】
~♪♪♪~


突然、鳴り響いた携帯の着信音。

「……」

見たこともない番号が表示されている。

携帯を睨んだまま、なかなか電話に出ない私を怪訝な顔で見ている文香。

「…鳴ってるよ?出ないの?」


「…うん」

頭をよぎるある思い。


意を決して電話に出た。


聞こえてきた声は

何ヵ月かぶりに聞く

あの低く澄んだ声――…。



『もしもし…純菜?俺のこと…覚えてる?』

小さく溜め息を吐き

「…覚えてるよ、龍太」

そんな私の言葉に文香が目を見開いている。


「なにか用?」

私は――…もう迷わない。


『…うん…まあ、あれだ、彼氏とまだ…続いてる?』

「…アンタに心配されなくてもちゃんと仲良くやってるわよ」

今さらなにを言いたいの?

『そっか…だったらいい。彼氏と幸せにな。それだけ…どうしても伝えたかったから…』

実は琴葉に連絡する必要はない、と言われたらしいけれど

やっぱり、けじめをつけたいからと

龍太はそう言って電話の向こうで笑う。


琴葉――…

彼女の存在が龍太を変えたのか…。

胸の奥に醜い嫉妬が姿を表す。


琴葉と呼ぶ、龍太の声が優しい――…。


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