金曜日の彼女【完】
「………おじさん…どういこと?」

「ハハ…麗美、そんなに怖い顔するなよ」

「―――…なんで龍太がいるのよ」

「悪ぃ…俺がおっさんに頼んだ」

そう言って少し照れ臭そうに、だけど柔らかい表情で微笑む龍太。


「アンタって…そんな風にも笑えるんだね」

嫌みとかじゃなく、ホントにそう思ったから、思わずポロリと本音が洩れた。

私が知っている龍太は、唇の端を少し上げて、自嘲気味に笑う。

人を見下すような笑い方しかできない。


「…俺って…どんな男だよ」

眉間に皺を寄せ、拗ねたような表情。

そんな表情さえ見たことがない。


結局、私は龍太を見ていなかった。

龍太の先にいる彼の母親を見て、一生懸命追いかけていただけなのかもしれない。


「麗美」

不意に名前を呼ばれて、龍太に視線を戻す。


本当によく似ている…。

バレそうになっていたとしても不思議じゃない。


「なに?」

「うん…琴葉のこととか、あといろいろ…ありがとな」


「…別に。アンタや彼女のためにしたわけじゃない」


そう――…

私はいつだって私のために行動する。



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