金曜日の彼女【完】
「ふっ…お前は相変わらずだな」

ククと笑う龍太は私が知っていた龍太だ。


「…お前はさ、俺が一番嫌って憎んだ女にそっくりだったんだよ」

「…それって…SEIKAのこと?」

コクリと頷く。

「モデルっていう仕事もそうだけど…やたらプライドは高い、おまけに上昇志向…。そういうとこ全部な」

確かにその通り…だけど。

今さらそんなこと――…

ムカムカしてきて、テーブルに置いてあったおじさんの煙草に手をかけようとした。


するとそこへ龍太の長い綺麗な手がスッと伸びてきて


「麗美、煙草はやめろ。あの女のようになりたいんなら…煙草は吸うな」

そう言って煙草を取り上げた。

―――…あの女。


SEIKAのことをそんな風に呼びながらも

どこかで、認め始めている。


「お前なら…麗美ならなれるよ、きっとな」


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