金曜日の彼女【完】
そう言って持っていた煙草をクシャッと手の中で潰す。

「お、おい龍太!それまだ中身が――…あー」

おじさんがクシャクシャにされた煙草を取り上げ、中身を愛しそうに眺めている。


「ついでにおっさんもやめれば?クックク」

どこかいたずらっ子のような表情で笑う。


そして、ふと真剣な表情になると

「俺さ、春からN.Yに留学するんだ」

ポツリと呟く。

「―――え、じゃあ…彼女は…?」

「…置いていく」

「は?――…なにそれ。それじゃ私が会わせた意味ないじゃないの」

「なんでお前が怒るんだよ」

苦笑する龍太。

「べ、別に…怒ってるわけじゃないけど…」

やっと、会えたんじゃないの?

これから、幸せになるんじゃないの?


「お前にだって…夢、あるだろ?」

「……」

「…今のままの俺じゃ、琴葉を幸せにすることはできない」

「……私の前で言う?」

今のは完全に嫌み。

これくらいは言わせてよね。

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