金曜日の彼女【完】
放課後になっても電源は落としたまま。

私の空しい心とは裏腹に

学校の中はバレンタインの華やかさに包まれていく。



「有紗は誰かにあげたりするの?」

多分、あげてはないとは思うけど…。

「私?もうあげたわよ」

「――…へ?うそ!!誰に!?」

「慎」

思わずゴクンと生唾を飲み込んだ。

「――…お、沖本君!?…なんで?つ、付き合ってる…とか?」

「まさか。アイツ、チョコくれってしつこいから。義理に決まってるでしょ」

――…そういえば昼休みもそんなこと言ってたような…。


「沖本君なら…他の人からももらえそうだけど…」

彼もそれなりにモテる容姿と性格を持ち合わせている。


「もらってるでしょ。他の娘からも」

そう言う有紗をチラリと見たけれど、特に表情に変化はない。

だけど


有紗が好きな人以外にチョコをあげるなんて、めずらしかったりする。

相変わらず、中途半端が嫌いだから。

バレンタインでも義理チョコなんかはあげたことがない。

そんな有紗が…沖本君に義理チョコ!?



前から仲は良かった2人。

だけど、お互いに恋愛感情があるような、そんな素振りは見たことも、感じたことさえない。


どんな気持ちで有紗はチョコをあげたんだろう――。


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