金曜日の彼女【完】
バレンタイン
階段を急いで駆け降り、下駄箱を横切りグラウンドに出た。
ここを突っ切ればそこには―――…
「龍太~、いきなり学校辞めちゃって寂しかったー」
「龍太先輩、また学校に戻ってくるんですか?」
「はい、チョコレート!龍太のために用意したのよ」
「……」
すっかり忘れていたけれど
ここにいた頃の龍太は、かなりモテていたんだった。
たくさんの女の子に囲まれ、困惑の表情を見せながらも、どこか優雅に微笑んでいる。
そんな龍太を少し離れた場所から見ていたら
私に気づいた龍太がその女の子達の間をすり抜けて、私に駆け寄ってくる。
私だけに向けてくれる最高の笑顔で――…。
「琴葉」
私の名前を呼ぶ。
私だけの名前を――…。
私だけの龍太。
「龍太」
周囲から洩れ聞こえてくる悲鳴やどよめき。
だけど、今の私達には関係ない。
「…電話…出ろよな」
私の鼻に人差し指をそっと擦り寄せて、フッと笑う。
「…だっ…て…」
視界が滲み、鼻の奥がツンとし始める。
「まったく…」
呆れながらも、頬に優しく手を添えられた。
ここを突っ切ればそこには―――…
「龍太~、いきなり学校辞めちゃって寂しかったー」
「龍太先輩、また学校に戻ってくるんですか?」
「はい、チョコレート!龍太のために用意したのよ」
「……」
すっかり忘れていたけれど
ここにいた頃の龍太は、かなりモテていたんだった。
たくさんの女の子に囲まれ、困惑の表情を見せながらも、どこか優雅に微笑んでいる。
そんな龍太を少し離れた場所から見ていたら
私に気づいた龍太がその女の子達の間をすり抜けて、私に駆け寄ってくる。
私だけに向けてくれる最高の笑顔で――…。
「琴葉」
私の名前を呼ぶ。
私だけの名前を――…。
私だけの龍太。
「龍太」
周囲から洩れ聞こえてくる悲鳴やどよめき。
だけど、今の私達には関係ない。
「…電話…出ろよな」
私の鼻に人差し指をそっと擦り寄せて、フッと笑う。
「…だっ…て…」
視界が滲み、鼻の奥がツンとし始める。
「まったく…」
呆れながらも、頬に優しく手を添えられた。